一周年記念企画

第1回 五月八日の小説倉庫 キャラクター投票 結果発表
─風の丘亭の特別な一夜─

ライン

「すまんな、これから貸切なんだ」
 普段より早く最後の客を追い出した風の丘亭のマスター(武器屋リードの営業日誌)は星空を見上げ、小さく息を吐いた。白いもやが冷たい夜気の中に一瞬だけ漂う。辺りの家々から漏れる温かみのある明かりを見ていると団欒を楽しむ家族の笑い声が聞こえてくるような気がした。寒さは一団と厳しくなるが人々の温かさは変わらない。今年も暖炉に優しさという名の薪をくべ、娘と二人無理をせず、穏やか冬を越せれば、それでよかった。
 そのためにはこの一夜を乗りきらねばならないわけだ。
 口髭を撫で、マスターは手にしていた羊皮紙を入り口の扉に貼り付けた。
「主のご加護を」
 祈るマスターが見つめる先、張り紙にはこう記されている。
「本日貸切。五月八日の小説倉庫キャラクター投票結果発表会場」
 と。


 店内のテーブルには所狭しと料理が並べられ、立ち上る湯気と香りが総勢十五名のゲストの頬と鼻を撫でている。マスターも、給仕を担当している娘のニーナ(武器屋リードの営業日誌)も一応はゲストだ。もっとも、会場の準備をし、料理を作らなければならない時点で純粋なゲストとは言えないのかもしれないが。
 それぞれが生活する場所から何がしかの、文字にはできないような、それはしばしば作者の都合と呼ばれるような方法で集まった十五人。顔合わせも終わった所で一匹の黒い仔猫が一同の前に歩み出る。十四人分の視線によるプレッシャーのせいだろうか。仔猫……アクロ(猫と魔術)の足取りは少しばかりぎくしゃくしている。アクロは正面に置かれている木箱の前で一度体を縮めると、跳躍した。
 そして、ぺしっ、と木箱の中ほどに両手をつき、そのままずり落ちる。
 辺りに流れる妙な沈黙。
 一同の方を振り向くこともせず、ただでさえ小さな背中をさらに小さくするアクロの姿に孫を見つめるお爺ちゃんお婆ちゃんのような表情で、うんうん、と皆が肯く。結局アクロはクレア(武器屋リードの営業日誌)の手によってしばし撫で回されたあと、無事木箱の上に乗せられたのだった。
「ふぅ。ありがと」
「どういたしまして」
 そう返すクレアは満面の笑みを浮かべている。お伽噺にしか出てこないような喋る猫に会えたことが嬉しくて仕方ないらしい。最後にクレアはアクロの頭を撫で、自分の席に戻った。そこで隣に座っているリード(武器屋リードの営業日誌)に上気した頬を向ける。
「やわらかかった」
「そか」
 短く答え、苦笑するリード。
 壇上ではアクロの挨拶が始まった。普段は赤い首輪が巻かれているその場所には同じく赤い蝶ネクタイが。今日のためにおしゃれをしてきたらしい。ちなみにアクロ用の蝶ネクタイを作ったのはティア(猫と魔術)である。
 ティアはアクロを見つめて僅かに微笑んだ。満足のいく出来だったようだ。
 アクロは小さな前足できゅっきゅと蝶ネクタイを正し、背筋を伸ばした。
「えー、こほん。五月八日の小説倉庫キャラクター投票結果発表の会場へようこそ。なぜか本日の司会進行役に抜擢されてしまったアクロです。ふつつかな猫ではありますが、最後までよろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げるアクロ。拍手と口笛が店内に満ちた。
「えーっと、それじゃあ冷めないうちにお料理を食べながら、早速15位から発表していくね。ちなみに全投票数は277票だったよ」
 木箱を飛び降りたアクロがクレアの膝の上に駆け上がる。ここが本日の定位置らしい。
「急に口調が変わったな」
「あれはあいさつ用。これがほんとの猫かぶってるってやつ」
 にんにくとベーコンのスパゲティをフォークで巻き取りつつ呟くリードに向かってアクロが髭を揺らす。
「言うねぇ」
「へへ。あ、リードは耳でスパゲティ食べられるってほんと?」
「それは都市伝説だ。忘れろ」
 うめくリード。ふぅん、と漏らすアクロはいささかつまらなそうだった。せっかく見せてもらおうと思ってたのに、と表情が語っている。
「それより発表するんだろ。15位」
「あ、そうだったそうだった。みんなおいしい料理に夢中になるのは分かるけど僕の話聞いてね。じゃあ15位発表するよー」
「その前に訊きたいことがある」
 その声は重く、冷たかった。もっともそれは意図的なものではなく彼の地声なので仕方のないことのなのだが。
「はいどうぞ、クロちゃん」
 桃色の肉球を向けられたクロちゃん(血と香水のインク)の眉間に皺が寄る。呼び名が気に入らないのだろうが、それは名を捨てたものの宿命と思って諦めるしかない。ただ、クロちゃんを連呼していると何だか作者が辛くなってくるので地の文だけは「暗殺者の青年」と記すことを許していただきたい。
 暗殺者の青年は何か胸に溜まったものを抜くように息を吐き、腕を組んだ。
「喋る猫がいて、仔犬がいる。ここまではいい」
 暗殺者の青年の視線がアクロ、そしてシャロン(妹と弟とシグ・ザウエルP226)に抱かれている白く、もふもふとした小さなリード(武器屋リードの営業日誌)へと移る。
「なぜ熊がいる」
 その一言に十四の視線がある一点に集中した。黒く、巨大、かつ艶やかな体躯。その爪の一薙ぎで人間の体など木の葉のごとく宙を舞うだろう。圧倒的な存在感をもって、その生物はそこにいた。もっとも、そんな熊(武器屋リードの営業日誌)の目は疑問を発した暗殺者の青年より遥かに穏やかなのだが。
「うーん、冬眠前だし、さらに大きくなっとるな」
 息子の成長を喜ぶ父のごとく、感慨深げに呟くリード。
「暴れだしたら抑えられんぞ」
「あら、こんなにかわいいのに」
 眉間の皺をさらに深くする暗殺者の青年に対してティアが言う。ティアは熊の体に触れ、微笑んだ。世界を七日で滅ぼす魔力を持つティアにしてみれば熊など仔犬に等しいようだ。
「じゃあ、クロちゃんの理解も得られたところで第15位!」
 アクロがぴん、と前足を上げる。
「15位は二人いるよ。
 笑顔で人を刺すタイプ? 風の丘亭の看板娘ニーナ。
 本気になれば世界はあなたのもの。役所勤めの魔法使い、ティア。
 共に1票だねー」
 ニーナは頬を染め、恐縮しながら、ティアは優雅に、それぞれが拍手の中対照的な礼をする。
「ティアには『分かりにくいけど優しいティアさんが好きです』ってコメントが届いてたよ」
「分かりにくい、っていうか基本は冷た……がっ」
 何事か言おうとしたセイル(猫と魔術)が涙を浮かべてテーブルに突っ伏す。テーブルの下で何が行われたのかは分からない。ただ暗殺者の青年が、
「抜き手か」
 と妙に感心したような声で呟いたのは確かだった。
 なにやらセイルに同情的な視線が注がれる中、アクロの司会は続く。
「えーっと、作者からのコメントを紹介するね。『15位の二人は共に違う意味で予想外の二人でした。ニーナに一票入ったこと。そしてティアに一票しか入らなかったこと。正直、ニーナに票が入るとは思ってませんでしたし、ティアはもっと上位に食い込むと思ってました。そんなわけで共にまさか15位、の二人でしたねー』だって」
 クレアが支えている羊皮紙からアクロが顔を上げる。
「わたしは……選んでもらえただけでも十分嬉しいです」
 白いエプロンをきゅっと握って頬を赤くするニーナ。ティアも唇を僅かに緩める。
「同感ね。それに、自分を好きだと言ってくれる人間なんて一人いれば十分。むしろ一人だからこそ貴いのよ」
「いや、でもっやっぱり俺はたくさんのおねーさんにきゃーきゃー言われ」

ごきょ。

 鈍い音と共にリードがテーブルに突っ伏す。テーブルの下、クレアの手にパン生地を伸ばす時に使う棒が握られている理由は誰にも分からない。
「脛いきましたね、脛」
「君とは何かと分かり合えそうだな、青年」
 涙目のリードとセイルの間に芽生える妙な友情。いや、生き残るための知恵か。古今東西弱いものは群れることで生き延びてきたのである。
「じゅ、13位ー」
 流れを取り戻そうと必死なアクロ。その声は少しだけ震えていた。
「13位は2票獲得。苦手なものは慣用句。強く陽気なアイリッシュ。シャロン・オブライエン」
 胸に抱いていた小さなリードを隣のセシル(武器屋リードの営業日誌)に預け、シャロンがすっと立ち上がる。胸元と背中が大きく開いた黒のドレスに身を包んだシャロンに誰からともなく感嘆のため息が漏れた。優雅な動作で一礼するその姿からは気品さえ感じられる。もっとも、シャロンの本性を知っている非合法な職に就く所帯じみた25歳の兄(妹と弟とシグ・ザウエルP226)だけは頬杖をつき、つまらなそうな顔をしているが。
「いつ化けの皮がはがれるやら」
 非合法な職に就く所帯じみた25歳の兄──長いので以下「所帯じみた兄」と略す──が苦笑しつつ漏らす。その瞬間、どこからともなく取り出したグロックを所帯じみた兄に向け発砲するシャロン。
 一切のためらいは見られなかった。沈黙の中銃口から薄い白煙が立ち上る。所帯じみた兄のつま先をかすめ、弾丸は床に穴を開けていた。
「誰が馬券売り場に群がる人生タイトロープなおじさんみたいな格好かっ!」
「無茶言うな! そして撃つな! 『ばけ』しか合ってねぇっ!」
 絶叫する所帯じみた兄。
「何よ。小粋なアイリッシュジョークじゃない」
「……修羅の国か、貴様の祖国は」
 銃口をふっと吹いて言うシャロンに向かって所帯じみた兄がうめく。
 まぁ、何にせよ化けの皮はあっさりはがれたようである。
「え、えーと。シャロンへのコメントを紹介するね」
 その声は何かもう一生懸命だった。がんばれアクロ。
「『そーいえばシャロンとセシル、ちょっとキャラかぶってません?』
『お茶目な性格が好きです。是非続編をお願いします!』だって」
 シャロンは人差し指を顎にあて、しばし天井を見上げた後で似ていると言われたセシルに視線を向けた。セシルもセシルでシャロンを見返している。
「あなた、笑顔は好き?」
 シャロンが問う。
「ええ、子供達のなんて特に」
 セシルが答える。
 シャロンは微笑し「私もよ」と返した。つられたようにセシルも破顔する。
「ほんと似たもの同士ね、私たち」
 なお、この時リードと所帯じみた兄は同時に同じ事を考えていた。
「きれいにまとめてんじゃねぇ」
 と。
「ところでお茶目ってどういう意味?」
「人の眼球に茶柱を刺して回る妖怪のことだ」
 今度の銃声は二つだった。
「あなたの冗談笑えないから嫌い」
 二発の銃弾によって所帯じみた兄がどうなったのかはあえて記さない。
「作者からのコメントは……『シャロンとセシルのキャラが似てるのは同じボケ担当だからでしょう。私の書く小説は基本的に主人公がつっこみ担当なので。なお、シャロンは当初『綾香』という名の日本人女性でした。ただもう少しキャラ的にひねりが欲しくなり、当時というか今でも好きなアイルランド出身のアコーディオン奏者シャロン・シャノンを元ネタにシャロンが生まれたわけです。シャロンが祖父からもらったアコーディオンを大切にしてるのという設定があるのもそういう理由からです。ちなみに日本のスポーツカー好きなのは単に作者が車好きだからで、大した意味はありません。あと、妹と弟と〜については続編を望む声が多かったのが結構意外でした』だって。以上作者からのコメントでした」
 間髪入れずアクロは続ける。
「じゃあこの調子で10位いくよー。10位は三人。結構多いね。
 名前などとうの昔に捨て去った。闇に生きる異国の暗殺者、クロちゃん。
 世界の全てが自分の庭。旅する武器商人。そしてここでは少数派の常識人。ガルド。
 ふわふわでもこもこ。ころころでもふもふ。小さなリード。
それぞれ3票獲得。クロちゃんには、

 女に騙される暗殺者萌え
 名前を捨てた殺し屋。渋いです。
 黒いから

ガルドには

 純情なガルドさんに一票!

小さなリードには

 犬の名前がリード、じゃなくて、リードを犬に!? と一瞬思った私はきっと負け組。
 尋常じゃない可愛さが伝わってきます。もふもふわんこ。

というコメントをそれぞれ貰ってるよ。ついでに作者のコメントは『10位はなんともバラエティに富んだ面々が揃いました。意外だったのはガルドへの3票ですね。営業日誌の二話はいまいち注目度が低いと思っていたので、二話からのノミネートはないと思っていたのですが……。ガルドに注目してくれた方がいたということで嬉しかったですね。それと小さなリードはどうあがいても犬からは抜け出せないのでしょうか。がんばれクルールの小さなリード かっこ 笑い』」
 律儀に(笑 を声にして読み、アクロが顔を上げる。
「何と言うか、自分がここにいることが場違いなような気もするが応援してくれた人たちに人たちに礼を述べたい。しかし純情とはな。生まれて初めて言われたよ」
 髭を撫でながら照れ笑いを浮かべるガルド(武器屋リードの営業日誌)
「ありがとう。普通にコメントが返ってくることがこんなに嬉しいなんて」
 うんうんとアクロが肯いた。
 先は長いぞ。くじけるなアクロ。ついでに作者もだ。10位発表の時点で原稿用紙換算13枚を超えてるのが気になるがな。
「小さなリードにコメントを貰うのは無理として……」
 セシルの腕の中で小さなリードが「あう」と鳴く。尻尾をぱたぱた。一応喜んではいるようだ。
「クロちゃんから一言」
 再びアクロから肉球を向けられた暗殺者の青年は腕を組み、目を閉じる。そのままぽつり、呟いた。
「萌えとはどういう意味だ」
「気にするな。知らなくても生きていくうえで何の支障もない」
 リードの言に目を開いた暗殺者の青年は「そうか」とやはりぽつりと呟いた。
「ちなみに彼は妹萌えよ」
「あ、それならここにも」
 リードと所帯じみた兄をそれぞれ指差すセシルとシャロン。と、暗殺者の青年も何やら合点がいったようだ。
「なるほど。萌えとは女に縁のない男が抱く歪んだ性癖のことらしいな」
「違うわっ!」
 リードと所帯じみた兄が同時に叫ぶ。
「というか俺は従妹(クレア)に萌えてなどおらん」
「同じくだ。家族愛と言え、家族愛と」
「大体君は何だね、男のくせに香水の匂いなどさせおって」
「まったくだ。情けない」
「香水?」
 リードと所帯じみた兄のブーイングに暗殺者の青年は自分の腕に鼻を寄せた。
「あぁ、来る前にエレナを抱いたせいだろう。移り香だ」
 いまいち女性に縁のない二人、撃沈。
 テーブルにのの字を書く二人の姿に戸惑いつつ、気丈な仔猫は自分の仕事を忘れてはいなかった。クレアに頭を撫でられつつ、アクロの司会は続く。
「第9位! 料理のことなら何でもお任せ。でも昔は騎士団長? 風の丘亭のマスター……って、あれ? いないや」
「あ、お父さんなら厨房に。かまどの火を見なきゃって」
 ニーナに言われ、アクロは前足で頭を掻いた。
「じゃあ先に作者のコメントを読むね。『風の丘亭のマスターは私の趣味全開で生まれた人物でした。私、元○○という設定が大好きなんです。彼にはこれからも名脇役として活躍してもらおうと思います』だって」
 その時湯気が立ち上る大皿を抱えてマスターが厨房から戻ってきた。マスターが抱えて大皿なのだからその皿の大きさは推して知るべし、である。マスターは中央のテーブルにその大皿を置き、分厚い胸板を少し張った。どうやら自信作らしい。
「珍しく海のものが手に入ったんでな、やや酸味をきかせた炒め物にしてみた。調味料はそれほど使ってないが魚介の旨味自体が……」
 と、いうマスターの説明はもはや誰も聞いていなかった。無数のフォークとスプーンが皿に向けられ、テーブル上は戦場の様相を呈している。
「クレア、かに。僕かに食べたい」
「猫にカニは危ないと聞くが」
 フォークを手にしたレイ(武器屋リードの営業日誌)が心配そうな顔でアクロを見つめる。
「そんなぁ。こんなに美味しそうなのに」
「大丈夫よ。何かあったら癒してあげるから」
 しゅんとするアクロにティアが微笑みかける。
「やった!」
 司会者すらこの有り様だった。仕方なくマスターはアクロの元から羊皮紙を取り上げ、目を通していく。マスターには、

 是非あなたのお菓子を! お菓子を食べさせて下さいいぃい(存在感があって良い脇役さんだと思いますううぅう)!
 ギャップが良い!!
 マスターの料理が食べたい

というようなコメントが寄せられていた。髭を撫で、微笑する。
「近くに来た時は寄るといい。うちは来るものは拒まずだ」
 そう胸中で漏らし、マスターは手にしている羊皮紙を丁寧に折り畳んでポケットにしまった。それからパイの焼け具合を見るべく再び厨房に戻っていく。
 大皿がすっかり空になり、一息ついて十秒ほど料理の余韻に浸った後でアクロはふと気付いた。
「あれ。マスター……は?」
「何やら幸せそうな顔で厨房に戻ったようだが」
 そう答えたレイにむー、とうなり、
「8位と7位は同時発表!」
 とアクロはやや強引に司会を続けた。どうやらやり方が分かってきたらしい。
 つまり、細かいことを気にしていたらやってられない、だ。
「8位は6票獲得、無色透明無味無臭。あなた色に染め上げて。セイル・ウィンフィールド。そして7位は7票獲得、空色の瞳をした小さな哲学者、僕ことアクロでした。『猫と魔術』から仲良く二人だね。僕達に寄せられたコメントはこちらー」

 セイルへ。

 アクロとのやりとりがツボでした。強い女性の尻にひかれかけているところもい
 いですね。
 ニンジンはだせたかな?

 アクロへ。

 や、彼らの「その後」なんて見てみたいかな、と・・・。あのお話、好きなんで。
 自分もアクロに左肩を予約して欲しいです。
 うちのククロに孫が出来ました。その幸せを願って、一票☆
 すっっごく迷いましたが、アクロのかわいさに一票!
 クライマックスのセリフが大好きで感動したから。可愛いvv


「で、作者は『うーん、コメント書くのが辛くなってきた。思いつかないからなし』」
「本気か?」
 セイルの問いにアクロを膝に乗せているクレアが羊皮紙を一枚めくる。
「『……というわけにもいかないので頑張ります。セイルとアクロ、正直どちらか片方は5位以内に入ると思っていたのですが、意外と票が伸びませんでした。二人のその後は……今の所考えてないですね。何を書いても蛇足になりそうでちょっと怖かったり。まぁ、幸せで仲良くやってるよってことで』だって」
 羊皮紙から顔を上げたアクロが髭を揺らす。
「さてセイル。コメントちょうだい」
「頂戴、って……手からにんじんは出ないけど、ティアさんには相変わらず理不尽な仕打ちを受ける毎」

 どすん。

「寸頸か」
 という暗殺者の青年の一言をもって皆さんには何が起こったのかを察して頂きたい。なお、一部の人にはセイルの口から半分抜けている魂が見えることもあるだろうが気にしてはいけない。
「とまぁ、セイルは日々こんな感じ。僕は……うんと、そうだね。最近は本を読むのが楽しくてよくセイルに図書館から本を借りてきてもらってる。落ち着いた毎日だね。ククロは僕と同じ黒猫で、学校に住んでるインテリさんだったよね。どうぞお幸せに。でも学校かぁ。僕も今度行ってみようかな。あそこなら本もたくさんあって頭のいい人もたくさんいるからね。みんな、たくさんの投票ありがとう。セイルの分も合せて感謝」
 深々と頭を下げるアクロに拍手と口笛が降り注ぐ。照れ笑いを一つして、顔を上げたアクロは短く息を吐いた。
 さぁ、中盤戦から終盤戦だ。
「続きまして第6位! 6位は13票獲得、心優しき森の番人、くまー!」
 と、片前足をあげて紹介された本人、もとい本熊はいまだ意識不明のセイルに鼻先を近づけ、匂いをかいでいた。
 果たしてこれは食べられるのだろうか。そんな様子に見えなくもない。冬眠前だし、少しでもおなかにたまるものを。そんな熊語が聞こえてくるようなこないような。
 正直かなり不安だったのだが、ティアが心底楽しそうに見ているのだから大丈夫なのだろうと、アクロはとりあえず先に進めることにした。
「熊に寄せられたコメントはこちらー」

 リードに投票しようと来たら、こんな選択肢が! 浮気しました。(笑
 ひょっとしてリードの友人の中で一番優しい奴かも知れない。(気が立ってなければ)
 がおがお、かじかじw
 番外編その2が好きなものでw

「作者より『完全に予想外。そして冗談の分かる皆さんに万歳。いろんな意味でやられました。完全にダークホース。熊だけど』 うん、最後のシャレはちょっと笑えないかな。再考の余地ありだね。えーっと、熊さんのコメントは……とりあえずセイルの頭を甘噛みしつつ、何だか幸せそうです。それを見ているティアはなぜだかもっと幸せそうです。以上、アクロがお伝えしました」
「あれぞ正しい男女関係よね」
 ティアとセイルの姿を見ながらシャロンがしみじみと言う。
「どこがだ……」
 所帯じみた兄が唇を歪めてうめく。
「ねぇティアさん。どうやってそいう関係を築き上げるの?」
 シャロンに問われたティアはその彫像のごとく美しい顔に冷たい微笑を貼り付け、言った。
「圧倒的暴力」
 おぉ、と感嘆の声をあげたシャロンの指がすぐさまグロックのトリガーを三度引いた。三発の銃弾によって所帯じみた兄の何がどうなったのかはやはり記さない。
「冗談なんだけど」
 そう呟いたティアの声は当然のようにシャロンには聞こえなかった。
「わたしの目指す所って、あそこ?」
「違います」
 首を傾げるクレア。そして本気で否定するリード。
「とっ、とにかくここからは大接戦の上位五名。みんな注目してね。それでは早速第5位。28票獲得。写本室の管理人にして笑いの伝道師。これでいいのか修道女。セシル・アイフォード!」
「やった」
 拍手の中、セシルが両手をぐっと握る。
「時代が私の生き様に追いつきつつあるようね。次回はもっと上狙うわよ」
「セシルへのコメントはこんな感じ」

 敬虔な修道女なのに笑いを極めようと頑張る姿がめちゃめちゃ可愛い。。。
 いろいろと彼女とリードはいいコンビなきがします
 第一印象だけにだまされてみる。密かにリードとのカップリング希望。
 個性が強いとはきっとこういう人をいうんでしょうね。。
 敬虔な芸人さんって大好きですっ! あれ? なんか間違ってます?
 このまま突っ走っちゃってください。周りの突っ込みなんて気にしないで(笑)
 あの深い深〜い性格に感銘を受けました。
 彼女のあの奥の深い性格が好きです。
 彼女のキャラは好きです。いつかお笑いの世界で認められるといいね。

「芸の道は果てなく厳しいもの。でも私頑張る。いつか世界を笑いで満たすその日まで!」
 遥か遠く、セシルにしか見えない星を見上げ、宣言する修道女。
 いいのか、それで。と心の中でつっこみを入れた者数名。
「リードといいコンビ、とかカップリング希望とかっていうコメントもあるみたいだけど?」
 少しからかうような表情でアクロがセシルを見上げる。セシルは胸元に手を置き、穏やかな笑みを浮かべた。
「私は主に身も心も捧げた者だから。でも……もし叶うなら」
 少しだけうつむいて、それからセシルは意を決したようにリードの顔を見つめた。
「バカは嫌」
「うるせぇっ! お前が言うな宗教芸人!」
 拳を握って立ち上がるリード。
「何よ。私にだって選ぶ権利はあるんだから!」
「俺にだってあるわっ!」
「ない! というか権利があっても余裕がないでしょうが!」
「うわ。ひっでー、それは言っちゃいけないんだぞ。人として」
「知らないわよ。あなたが独身なのは別に私のせいじゃないし」
「うぅ……うっ」
「あ、泣くんだ。泣けー、泣いちゃえー」
 手を頭上に掲げ、ぴらぴらと振るセシルに頭を抱えるリード。
「……とまぁ、恋に発展することは決してないだろうけど、仲はいいみたい」
 しばらく終わりそうにない、いい歳した大人のケンカを横目で見つつアクロはため息まじりに言った。
「作者のコメントいくねー。『セシルは間違いなく最も当初の予定からずれたキャラです。二話で初登場したときの描写を見ていただければ分かるかと。キャラの一人歩き、というか暴走をまざまざと見せ付けてくれた登場人物でした。ただそれだけに書いていて楽しいキャラでもありますね』だって。作者の計画性のなさが伺えるコメントだね。後で困るくせに全く反省しないんだから」
「ダメ人間だね」
「クレア。自覚があってもそうはっきり言われると本人へこむと思うよ。それじゃ続きまして第4位! 4位は何と5位と1票差。29票獲得。実はメインヒロイン? 愛の鎖でリードを縛る。クレア・アークライト!」
「はーい」
 アクロを抱え、クレアが椅子の上に笑顔で立ち上がる。
「コメントはこちらー」

 かわええ
 かわいすぎです!
 とにかく可愛い。LOVE。
 愛らしい。
 ちびこちびこー
 かわいい!

「かわいい、ってコメントが多いね。ちょっと悔しいかな。クレア、感想は?」
 アクロが上目遣いでクレアを見上げる。
「んー、ちょっと複雑。嬉しいけど素敵なレディになるまではもうちょっとかかりそう」
 それからクレアは「ね、お兄ちゃん」とリードに笑顔を向けた。
「レディ、ね。とりあえず隠れておやつ食べるのはやめような」
 苦笑を返すリード。クレアは、むー、と頬を膨らませて椅子から降りた。どうやらクレアの素敵なレディへの道も長く険しいようである。
「作者からのコメント。『メインヒロインにしてはいまいち影が薄い薄幸の少女クレアが4位です。大人の世界にあってただ一人頑張るちびっこ。ただ使い所に迷うのも正直事実だったり。毎回毎回さらわれる訳にもいきませんし。ただ第五話からはクレアを中心に話を展開する予定ですので、出番も格段に増えることでしょう』だそうで」
 クレアを見上げてアクロが鼻をひくひくとさせる。
「うん。これからもがんばる。そして、お兄ちゃんのすべてを手に入れるのよ」
 そんなクレアの台詞にリードはスプーンをくわえたままため息をついた。
 やれやれ、といったところか。
「女は怖いぞ」
 皮肉げに笑いつつ暗殺者の青年が言う。その声には妙な実感がこもっていた。
 無言で肩をすくめ、リードは目の前のポタージュスープにスプーンを漬ける。
 ま、一度くらいは怖い目にあってもみたいけどな。
 とか思いつつ。
「さぁ、ここからはいよいよ上位3名の発表だよ。皆さん、盛大な拍手の用意を!」
 場をあおり、声を張り上げてアクロが続ける。
「大接戦の第3位。その栄光を勝ち取ったのは……36票獲得! 銃を持つ手に包丁握り、今日は野菜の特売日! 非合法な職に就く所帯じみた25歳の「兄」でーす。拍手!」
 一斉に盛大な拍手と歓声が……巻き起こらなかった。
 仕方がない。本人が顔面蒼白、魂が半分抜けたような顔でテーブルに突っ伏しているのだから。計5発の銃弾によるダメージは意外と重かったようである。
「あ、お婆ちゃん久しぶり。元気だった? なんか川あるね、川」
 どうやら所帯じみた兄はここではないどこかへ旅立つ途中らしい。
「おい、しっかりしろ。大丈夫か」
 慌てた様子でレイが所帯じみた兄の肩を揺さぶる。
 しばしの沈黙。
 所帯じみた兄の瞳に光が戻り、彼はゆっくりと体を持ち上げた。と、レイの顔を見た所帯じみた兄の顔が急に赤くなる。そんな兄の顔に手のひらで触れ、レイは安心したように微笑んだ。
「ん、血色も戻ったし温かみもある。大丈夫みたいだな」
「あぁ、いや。あは、あはははは。大丈夫。大丈夫です」
 なぜだか焦りまくる所帯じみた兄。先程まで水死体のようだった顔には汗さえ滲んでいる。
「あなた、ほんとに好きよね。黒髪のロング」
 野菜スティックを齧りつつシャロンが所帯じみた兄を横目で見つめる。
「うるせぇ」
 思い当たる節があるのかその声は少しだけ小さかった。
「じゃ本人も復活したところでコメントはっぴょー」

 口調がウチの管理職と似てる
 やっぱりこの人が一番かっこいい。求む続編!
 シグが渋いです!
 子供好きに悪い人はいないよw
 子煩悩なところがいい。
 まさしくお兄ちゃんの鑑でしょう! 続編があるとうれしいなぁ(ニヤリ
 最高です。お兄さん。
 兄弟を真っ当な人間に育て上げて欲しい
 続編希望です
 ぜひ、続編とか書いてほしいですね……
 仕事に、育児…、苦労人なのにそれを感じさせないところが、好きです。
 強くて優しいお兄さんを地で行く25歳。素敵です。

「全体的にいいお兄さんって意見と続編を望む声が多かったね。さて、いかが」
 首を傾げるアクロに所帯じみた兄は額の汗を手で拭いてから口を開いた。
「毎日大変だけど素直に嬉しいよ。ま、古株の面目躍如ってことで。凶悪なパートナーの手綱を握りつつ、これからもいい兄であり続けようと思う。ほんとにありが」

ぱん。

 一発の銃声と共に三度目の旅へ赴く所帯じみた兄。
「誰が凶悪なパートナーよ」
 あんただ。と、同時に思った者多数。
「さ、作者からのコメント。聞こえるかなー? 『というわけで大接戦の3位争いを制したのは所帯じみたお兄さんでした。私は3位クレア、4位セシル、5位兄の順だと思ってましたので意外な票の伸びにびっくりです。ラスト一週間、票数未公開になってからの得票が多かったですね。続編は営業日誌が片付いたらやるかもしれないですね。結構伏線張りっぱなしでうっちゃってる部分もありますので。彼の父親もどこで何してるやら』 以上作者からでした」
 それからアクロは鼻先を所帯じみた兄の方へ向けた。
「死なないよね?」
「大丈夫よ。慣れてるし」
 笑うシャロン。ひでぇ、と同時に思った者多数。
「では気を取り直して第2位の発表! 40票獲得! 実は3位と結構いい勝負だったり。美しき漆黒の戦乙女、レイ・ケインベック!」
 今までで一番大きな拍手と歓声が店内を揺らす。笑みをこぼしたレイは立ち上がり、深く一礼した。長く伸ばされた黒髪がはらりとそよぐ。意識のない所帯じみた兄があとで聞けば悔し涙を流しそうなほどの情景である。
「レイへのコメントはこちらー」

 やっぱこのひとでしょ。かっこよすぎ
 この人をおいて他にいるとでも?
 かっこよいですよね〜。これから幸せになるといんですが
 槍ですね。 槍はかっこよいのです
 性格的に格好良いナァ……それより何より、槍での戦闘が素敵でした。
 好きなとこ…槍かな? 
 いやぁ・・・・お姉さんでしょやっぱり。貴女の将来に幸あれ

「私というか……槍に向けられたコメントが多いような気がするが」
「それだけイメージにぴったりはまってたってことかな? レイは掲示板での人気も結構高かったね」
「何にせよありがたいことだ。今は自分の歩むべき道を見据え、進んで行こうと思う。応援に感謝する」
「うん、がんばってね。そして珍しくまともなやりとりをありがとう。みんながレイみたいだったら僕の小さな胃も、もう少し楽なんだけど」
 にはは、と笑うアクロにレイも小さく口元を緩める。
「作者からのコメント。『うん、下馬評通り、予想通りの二位でした。こういう男勝りというか、ちょっとぶっきらぼうな感じの女性を書いたのは実は生まれて初めてでした。営業日誌の第三話は書きたいことが割とはっきりしてたので、そこに上手いことはまったようですね。三話終了時点でいなくなる予定だったのですが続投中です。四話では何らかのけりをつけますので注目しつつものんびりと、気長にお待ち下さい』 大注目! とか、見逃すな! とか言い切れないところがいい具合に根性なしだね」
「奴にも色々あるのだろう。察してやれ」
 そう言ってレイは苦笑した。
「さぁ、それではいよいよ……」
 言葉を切って再度蝶ネクタイを正し、一同の顔を見回すアクロ。
「第1回 五月八日の小説倉庫 キャラクター投票 第1位の発表だよー!」
「別に発表しなくてもいいような。だって残った一人が1位でしょ?」
 しれっとした顔でセシルがそんな事を言う。
「まぁ、それもそうかもね。よく考えたら私達まだ乾杯もしてないし」
 シャロンが言う。
「レイさんはお酒好き?」
「まぁ、たしなむ程度にはな」
 そう言ってレイがシャロンに向けた微笑はどこか不敵なものを含んでいた。
「あら奇遇ね。私もたしなむ程度」
 もちろんこちらも気合い十分だ。
「いや、あの」
 何事か言おうとするリードの声は届かない。
「今夜は寝かせないわよー」
「だと嬉しいのだがな」
「だから、その」
 結局、場はそのまま宴会になだれ込んだ。シャロンとレイが飲み比べを始め、暗殺者の青年とティアはカウンターで二人、大人の酒を楽しんでいる。ニーナは給仕に大忙しで、所帯じみた兄は「うーん、鬼が僕の積んだ石を倒していく」とどこぞの川原にいるらしく、胸に小さなリードを抱いたクレア、そしてセシルは二人並んでガルドの語りを聞いている。熊は相変わらずセイルの頭を甘噛みしていて……要するに非常に騒がしかった。
 皆、結果発表のことなどすっかり忘れてしまったようである。
 そんな中、リードは一人ふらりと立ち上がり、店の隅で膝を抱えて座った。自分に何か落ち度があったのだろうか。やはりリード・アークライトの分際で1位などとるべきではなかったのだろうか。
 そんな負け犬根性。
 と、リードの前にアクロが座った。アクロは空色の瞳をリードに向けてちょっとだけ笑う。
「やろうよ、たった二人だけの結果発表だけど」
「優しいんだな」
「役目は最後まで果たさないとね」
 リードは肯いて、アクロを自分の胸に抱いた。柔らかく、温かい。優しさを形にすると、きっとこんな風になるのだろう。
「じゃあ改めて。第1回 五月八日の小説倉庫 キャラクター投票 栄えある第1位は……いつか幸せになれることを信じて。女が何だ。武器屋の兄さんリードアークライト。獲得票数は唯一の3桁。100票でしたー」
 わー、ぱふぱふ、とアクロが肉球を叩いて拍手する。
「うぅ。ありがとう。ありがとぉ」
 そしてリード、ちょっと泣く。
「リードへのコメント、どうぞー」

 応援したくなります
 まず間違いなく一位だろうけど、やっぱり一回ぐらい入れときたい。
 がんばれ独り身
 人柄がいいですね、彼の運命に幸あれ。見ていて楽しいキャラクターです。
 いや、今回のストーリー読んだら更に好きになりました。いい人ですね。早くいい人見つけて欲しいものですなw
 いや、もうカッコいいですよ。これぞ主人公って感じで。…あ、膝枕で耳掃除ってのは俺も夢です。ガチで。
 やっぱり主人公だしね。なぜもてないのか不思議なほどかっこいい!
 強くあろうとする姿勢にしびれました。
 歳が近いだけに結婚できないこと(禁句か?)に共感してしまう私・・・。私よか遥かにいい男なのに何故結婚できないんだろう・・・いい男過ぎる&鈍感だからか?
 いや〜、自然なカッコよさがいいですw 優しい所とかw ……なんで結婚でき(禁句につき略)
 やっぱリードは入れとかないと
 幸薄い独身男に・・・いいことあるといいね。
 25歳いまだに独身のこの男は果たして結婚できるのか・・・
 妹大好きなお兄さん、好きですー。
 はたから見るとロリコン以外何者でもない危ない主人公
 町のみんなのおもちゃになってる所が素敵にムテキ
 かっこいいですねぇ。強すぎず弱すぎず。他のサイトの小説だと強さがインフレ起こしたようなことになってるの多いし。マンセー
 彼の境遇はいろんな意味でスバラシイと・・・w
 無駄に(?)自虐的な彼に幸あれ!
 とりあえず主人公だし(ぉぃ
 いや、かっこいいと思いますよ。三枚目なところが目立つけれど、決めるときにはきっちり決める。僕もこういう男になりたいですね。
 何気に地味派手なのが格好良いですv
 ロリコン疑惑が出ないように気をつけて!!
 精霊鍛冶(偽)の腕に惚れました
 白くてふわふわの生き物が好きなので
 幼少時代とか初恋とかキュン*´∀`*キュン
 彼にもっと格好いいシーンをっ!
 何故か強いところが好きです
 一緒にいたら楽しそうw
 こんな兄貴が欲しいッス
 頼りになるお兄ちゃん☆
 いやーかっこいいっす(武器マニアな所もふくめてw)がんばってー

「よかったね。ほんとにたくさんの人がリードのこと、応援してるよ」
「うん……うん」
 アクロを抱き締めて肯くリードの頭上がふと陰る。
「何をやってるんだ? こんな隅で」
 パイの載った鉄板を手にしたマスターだった。マスターが眉根を寄せてリードの顔を覗き込む。
「うぅ……お父さん。僕いらいない子じゃなかった」
「誰がお父さんだ」
「まぁそれはさておき」
 それなりの支持は得られていると知ったリードの立ち直りは早い。アクロを抱いたまま、すっと立ち上がる。
「誰が何を言おうと1位は俺だ。それは即ち俺が一番偉いということだな」
「いや、別に偉いってわけじゃ……」
「で、作者はなんと?」
「あぁ、うん。『色んな意味でベタ』」
「それだけかよっ!」
「もうすでに作者の中では『リード落ち』の様式美が完成しつつあるようだね」
「……ロクでもないものばかり生産しよって」
 と、ぼやくリードの服を何者かが引っ張る。
 レイだった。頬が赤いのは酒のせいか、それとも別の何かか。
「リード、一曲踊らないか?」
「え?」
 顔に疑問符を浮かべたリードに答えるように、いつの間にやらシャロンが手にしているアコーディオンが見事な和音を奏でる。
「えと。その……俺でよければ」
 アクロを床に降ろしてやり、リードは微笑と共に差し出されたレイの手をとった。そのまま店の中央に作られたスペースまでエスコート。
 そして、曲が始まった。

 どこかたどたどしい二人のステップを見ながらアクロはくす、っと笑って髭を揺らした。
「1位だもん。少しはいい目も見ないとね」
 誰にも聞こえないように言って、アクロはもう一度だけ笑う。目を閉じたアクロは曲に合せて頭を左右に振りはじめた。
 ゆったりとした、いい気分。

 風の丘亭の特別な一夜はもう少しだけ続くようだった。

 終
最終結果(グラフ)はこちら。

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